- ショップ運営ノウハウㆍ運営食品を販売するネットショップ開業の流れ|必要な資格と注意点2021-07-09
- 食品のネット販売の現況やショップ開設の流れ、必要とされる資格や運営時の注意点などをご紹介します。
- 食品を販売するネットショップ開業の流れ|必要な資格と注意点
ネットショップにおける食品販売は、ほかの商品ジャンルと比較して利用者が少ない傾向にあります。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大による影響で、インターネットを利用した食品の購入需要が増えているため、これから事業参入する余地はあると考えられます。ネットショップで食品を取り扱う場合、商材によっては許可の申請を行う必要があります。今回は、食品のネット販売の現況やショップ開設の流れ、必要とされる資格や運営時の注意点などをご紹介します。
| ネットショップで食品販売を始める人が知っておきたい基礎知識
新型コロナウイルスの感染拡大は、ネット通販業界にも大きな影響を及ぼしました。新しい生活様式の中でユーザーのニーズを満たすためにも、まずは市場の状況について把握しておきましょう。
●飲食サービスの現状
2020年より世界的に感染拡大した新型コロナウイルスの影響により、飲食サービス業界は大きな打撃を受けています。総務省の発表によると、2020年12月の飲食店の売上は、昨年の同月と比較して27.9%減少しています。
同様に、テイクアウトやデリバリーサービスでも売上が減少しているものの、「持ち帰り・配達飲食サービス業」の売上は9.8%の減少にとどまっています。外出自粛の影響による需要もあり、こちらは飲食店に比較すると影響がやや少ないようです。
飲食サービスにおける感染症対策は必須で、衛生管理がより重視されています。2020年以降は、感染症対策をしっかりとできているかどうかが、消費者が店舗を選ぶ新たな基準のひとつとなっています。
【出典】 「サービス産業動向調査」(総務省)
●食品を販売するネットショップの将来性
食品のEC化率は、他の分野に比較すると低いことで知られています。経済産業省の調査によると、2019年時点で2.89%ほどでした。それに対して事務用品、文房具は41.75%、書籍、映像・音楽ソフトは34.18%であり、EC化率に大きな差があることがわかります。
食品販売に関しては、安全・安心の観点から実店舗で購入する方が多いと考えられています。消費者の「鮮度を重視したい」「手に取って産地を確かめたい」といったニーズがあると見られます。
ただし、外出自粛の影響により、食品のデリバリーサービスの需要は従来以上に高まっているのが現状です。アフターコロナにおける生活の変化を見据え、新たに食品を取り扱うネットショップの開業を検討する余地はあるといえるでしょう。
【出典】 「電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました」(経済産業省)
| 食品を販売するネットショップ開業の流れ
ネットショップの運営を始めるには、目標を明確にしてスケジュールを立ててから、サイト開設へ向けて動いていくことが大切です。取り扱う商品によって適用される法律が異なり、取得しなければならない資格も変わってくるため注意が必要です。自社の方向性を模索し、売上の見込めるECサイトを構築しましょう。
●STEP1:ブランドコンセプト、サービス内容を決める
ネットショップ開業にあたって重要とされるのが、ブランドコンセプトです。ショップのコンセプトを考案し、ブランド名を決めましょう。ショップを成功させるには、ターゲットを明確にすることや、自社の独自の価値を築くことが大切です。コンセプトに即したラインアップになるよう、販売するメニューを決めましょう。
また、デリバリーの方法や、支払方法なども検討しておきます。配送を委託する会社や、利用する決済代行会社によって、利用料が発生する点を考慮しておきましょう。
ほかにも、ネットショップ利用料や販売手数料などの費用がかかることがあります。必要な予算を想定し、事業計画を立てていきましょう。
●STEP2:開業までのスケジュールを立てる
ネットショップのコンセプトを決めたら、事業計画を基に、開業までの具体的なスケジュールを考案していきます。オープン予定の時期を考慮し、フローごとに必要な日数を定めましょう。
食品を販売する際、品物によっては資格取得の必要があります。資格の申請期間なども考慮し、余裕を持ったスケジュールを組みましょう。
●STEP3:設備の確保・人材の採用を進める
スケジュールを立てたら、ショップのオープンへ向けて動いていきます。販売する商品の調理を行う設備や、商材を保管する倉庫などを決めましょう。賃料、広さ、アクセスの良さなどの条件を見て、総合的に判断してください。
また、必要に応じて調理・管理を担う人材を採用しましょう。店舗運営にあたって必要な人数や、求めるスキルなどを定めた上で募集するのが大切です。
●STEP4:営業に必要な資格を取得する
営業する店舗の特性に応じて、必要な資格を申請しましょう。食品を販売する際に必要とされる主な資格は、飲食店営業許可証、食品衛生責任者、食品衛生管理者、食品衛生法に基づく営業許可などです。どの資格を取れば良いかはショップの商材によって異なるため、自社が該当する業種をあらかじめ確認しておきましょう。なお、各資格の詳細については、後ほどご紹介します。
●STEP5:税務署に開業届を提出する
個人事業主としてネットショップを開店するときは、税務署に開業届を出します。開業届の正式名称は「個人事業の開業・廃業等届」です。提出期限は開業から1カ月以内と決められているため、早めに書類を作成しておきましょう。
開業届を提出しておけば、確定申告の際に青色申告が行えます。青色申告とは、事業所得や不動産所得、山林所得のある方のみが行えるものです。白色申告と呼ばれる方法と比べ、控除額が大きくなる点がメリットです。青色申告をするためには、新規事業の開始日から2カ月以内に「青色申告承認申請書」を税務署に出し、承認を得なければいけません。開業届と併せて提出しておきましょう。
●STEP6:ネットショップを開設する
準備が整ったら、いよいよネットショップの開設です。ネットショップを始めるには、主にECモールを利用するパターンと、自社サイトを制作するパターンの2種類があります。
ECモールとは、モール型のECサイトのことで、大手ではAmazonや楽天市場などが挙げられます。ECモール出店のメリットは、モール自体の集客力を利用できることです。ターゲットとするユーザー層が多いサイトを選ぶと、より効果的な集客が期待できます。一方で、モール内の競合と差をつけにくい点や、利用料金が発生する点などのデメリットがあります。
自社サイトを開設すするなら、独自のデザインのサイトをつくれるメリットがあります。ブランドコンセプトに沿った、オリジナリティの高いデザインのショップを構築できるでしょう。ただし、モール型ECサイトのような集客を見込めるとは限りません。SNSでの広告やリスティング広告など、プロモーションを強化し、認知を高めることが大切です。
| ネットショップで食品販売を始める人に必要な資格
食品を売るときには、基本的に飲食店営業許可証や食品衛生責任者などが必要です。地域によって異なる内容の条例が設けられていることもあるため、所在地の自治体がどのようなルールを定めているかご確認ください。
●飲食店営業許可証
飲食店を開業する上で必要な資格が、飲食店営業許可証です。交付は保健所の管轄となります。営業施設が所在する保健所に事前に相談の上、営業許可申請を出しましょう。
許可を得るためには、申請書類や設備の概要を示す書類の提出が必要です。提出後に保健所の職員が施設を訪問し、確認検査を行います。不備を指摘されると修正に手間取ることがあるため、保健所へ事前相談をしておいたほうが安心です。特に開業前に工事をする場合は、着工前に保健所に問い合わせておき、施設基準について確認しておいたほうが良いでしょう。
●食品衛生責任者
食品衛生責任者とは、店舗の衛生を管理する責任者です。食中毒などを防ぐ役割を担います。飲食店の開業に伴い、各施設に1名の食品衛生責任者が必要になります。施設の数に応じた食品衛生責任者を配置しましょう。
資格を取得するには、保健所が実施する食品衛生責任者養成講習会を受講する必要があります。ただし、栄養士や調理師などの資格を持っていれば講習は不要です。
●食品衛生管理者
食品衛生管理者とは、衛生的に食品の製造・加工を管理する責任者のことです。食品衛生法第48条の規定により、特に衛生上の考慮を必要とする食品または添加物を取り扱う店舗において、配置が課されます。食品衛生責任者との兼務も可能です。
食品衛生管理者の配置が必須となる食品または添加物は以下のとおりです。ネットショップで販売する予定のものがないか、確認しておきましょう。
■ 全粉乳(その容量が1,400グラム以下である缶に収められるものに限る)
■ 加糖粉乳
■ 調製粉乳
■ 食肉製品(ハム、ソーセージ、ベーコンその他これらに類するものをいう)
■ 魚肉ハム
■ 魚肉ソーセージ
■ 放射線照射食品
■ 食用油脂(脱色または脱臭の過程を経て製造されるものに限る)
■ マーガリン
■ ショートニング
■ 添加物(食品衛生法第13条第1項の規定により規格が定められたものに限る)
食品衛生管理者になるには、定められている要件を満たす必要があるため、注意が必要です。医師、歯科医師、薬剤師、獣医師の免許を持つ人や、専門学校において医学、歯学、薬学、獣医学、畜産学、水産学、農芸化学の課程を修めて卒業した人は、食品衛生管理者になれます。また、食品衛生管理者養成施設で所定の課程を修了した人も、食品衛生管理者となる資格があります。ほかにも条件が定められているため、厚生労働省のWebサイトで確認の上、適切に手続きを進めましょう。
【出典】 「食品衛生管理者」(厚生労働省)
●食品衛生法に基づく営業許可
調理を必要とする食品を販売する場合は、「食品衛生法に基づく営業許可」が必要です。食品衛生法許可の取得が必要な業種は以下の34種類となります。表を参考に、当てはまるものがないか探してみましょう。
調理業
飲食店営業、喫茶店営業
製造業
菓子製造業、あん類製造業、アイスクリーム類製造業、乳製品製造業、
食肉製品製造業、魚肉ねり製品製造業、清涼飲料水製造業、
乳酸菌飲料製造業、氷雪製造業、食用油脂製造業、
マーガリン又はショートニング製造業、
みそ製造業、醤油製造業、ソース類製造業、
酒類製造業、豆腐製造業、納豆製造業、
めん類製造業、そうざい製造業、かん詰又はびん詰食品製造業、
添加物製造業
処理業
乳処理業、特別牛乳さく取処理業、集乳業、
食肉処理業、食品の冷凍又は冷蔵業、食品の放射線照射業
販売業
乳類販売業、食肉販売業、魚介類販売業、
魚介類せり売営業、氷雪販売業
| 食品を販売するネットショップを運営する際の注意点
ショップ運営を円滑に進めるには、衛生管理や法令遵守の姿勢が大切です。ユーザーの信頼を得られるWebサイトをつくり、新規顧客獲得を目指すのはもちろん、根強いリピーターを増やしていきましょう。
●衛生管理を徹底する
ネットショップで販売する食品は、飲食店で提供する食品と比べて、調理した後にお客様が食べられるまでの時間が長くなります。衛生面には一層注意の上、商品を提供する必要があるといえます。
衛生管理で重要とされることの一つが、調理器具の管理です。洗浄・消毒したものを使用し、用途によって使い分けましょう。
また、温度管理を徹底するのも大切なポイントです。食品を常温で放置すると、食中毒菌の増殖する原因となります。食材に合った方法で保管することを心がけましょう。また、加熱が必要なものは、よく火を通してから提供します。
●法令を守る
食品を販売する際は、法令を把握し、遵守することが求められます。景品表示法、食品表示法、JAS法、食品衛生法、健康増進法、米トレーサビリティ法などを確認しておきましょう。
景品表示法とは、消費者のために定められた法律のひとつです。販売する商品に正しい情報を記載しなければいけません。内容を誤解させるような表示をすると消費者庁の調査が入り、措置命令が行われることもあるため気をつけましょう。
食品表示法は、販売される食品の表示に関する法律です。設けられた基準に従って、食品の名称や栄養成分などを表示する必要があります。食品の表示に関しての決まりは、食品衛生法・健康増進法・JAS法の3種類に分かれていましたが、食品表示法によって統一され、わかりやすくなりました。
米トレーサビリティ法は、お米やお米の加工食品を取り扱うときに必要となる法律です。産地や数量など、決まった項目を記録しておかなければいけません。せんべいのような米菓だけでなく、清酒も対象となるため気をつけておきましょう。
●ユーザーが安全・安心と感じられる商品ページを構築する
ネットショップでの買い物は、店舗販売のように商品を確認することができません。消費者の不安を解消できるような商品ページをつくり、売上につなげていきましょう。
法令にもとづいた表記を行うことはもちろん、レシピを公開したり、製造現場の様子を録画したものを流したりといった工夫をしていくことが大切です。実際に購入したユーザーのレビューや、ショップ運営者の写真などの掲載も、安心感を高められる効果が期待できます。配送した食品に万が一のことがあったときの問い合わせ先も、わかりやすい場所に明記しておくことで、信頼できる業者と認識してもらえるかもしれません。
| ネットショップで食品販売をスタートするなら商品ページにこだわろう!
ネット通販には、商品に応じた法令が定められています。基準を満たせるショップを開設するため、関係する規定はしっかりと調べておきましょう。また、ユーザーに安心して食品を購入してもらうためには、商品ページにこだわることが大切です。自由にデザインできる自社サイトであれば、コンセプトにのっとった販売ページを作成しやすくなります。
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